「今日からはパラグアイはみんなのものだ」。選挙本部で国旗を振って喜びを表す支持者に向かって叫ぶと、顔をくしゃくしゃにして笑った。貧困と不平等との戦いを訴え続け、保守コロラド党の長期支配を打ち破った。
南部イタプア県の農家に生まれた。小学校の教員免許を取得したが、直後にカトリック系の修道会の聖職者見習いとなる。77年に聖職者となり、エクアドルで布教活動をした。
宗教活動と決別したのが05年。バチカンの許可を得ぬままに司教職辞任を表明、反政府デモなどの活動を始めた。貧困や保健衛生の不備に不満をつのらせる庶民の支持を得た。
朝日新聞にはこのように紹介されていたが、5月8日付の「カトリック新聞」にも紹介されていた。
バチカンは公式に大統領選出馬を承認せず、パラグアイ司教協議会も当初は同様の姿勢を示していたが、ルゴ司教は選挙前の支持率調査でもはじめからリードしていた。カトリック信者がおおい同国でのルゴ司教支持が堅調に高まる中,司教協議会は見解の開示を控えるようになった。
ルゴ司教は2005年、サンペドロ教区司教を退任した。バチカンは同司教が大統領選出馬決めた時点で、同司教の司祭職執行を禁じたが、還俗を願う同司教の嘆願は却下された。
一般メディアは、バチカンがルゴ司教の免職を検討する可能性を報じているが、駐パラグアイ教皇庁大使館はルゴ司教の引退司教としての身分には何の関わりもないとしている。
さてここで問題は現教皇ベネディクト16世であろう。教皇はバチカンの教理聖省の長官をしていたときに「解放の神学」者たちを喚問している。教皇の政治的立場が問われることとなるだろう。
以前、ハイチで元サレジオ会の司祭アリスティド神父が大統領に選ばれたことがある。このときも司祭職が停止され、さらにアリスティドは還俗して結婚したという。
今回は司教という高位聖職者であるだけに、その反響は大きいであろう。
貧困や不平等の問題に暴力的な手段に訴えずに取り組もうとする中南米の教会の姿勢に支持が集まっているということを意味しているのではないかと思う。
このパラグアイの新大統領に注目したい。