2006年08月13日

イワシのうまさに開眼したこと

 「これまでに食べたもっともウマイものをあげなさい」というテーマは分かち合いのテーマとしてはもっとも盛り上がるテーマの一つである。ただ単にどの店で食べた料理というグルメ自慢ではなく、そこにはその人の物語がこめられるからである。

 これは私が前の職場にいた時に房総半島九十九里にいった職員旅行の時である。もう25年ほど前のことであった。その日の昼食は「天ぷら食べ放題」の店であった。
 食事までに時間があったので、浜にでてみたら、女子大生が地引き網をあげようとしていた。しかし、みているとこの女子大生グループは逆に海に引きずり込まれそうなのである。彼女たちは「助けて!」と応援を求めてきた。
 それで、男の職員を集めて手伝ったら、30分ほどしてあげることができた。引き上げた網の中をみると圧倒的にイワシがあがっていた。今はこれほどイワシが上がることはないらしい。他にイシダイ、エイ、カレイなどがまじっていたが、あとはイワシばかりであった。
 イワシはさっそく箱に入れられてどこぞへもっていかれた。イワシのほとんどはハマチの養殖のえさになるらしい。

 女子大生にお礼を言われて、まずはよかった、よかったと満足げに昼食にあずかることになった。「天ぷら食べ放題」というその天ぷらは、ピーマン、ナス、そしてそのイワシの天ぷらだったのである。もちろん浜辺で今あげたイワシではなかったのだが、そのイワシの天ぷらがたまらなくうまかった。イワシってこんなにウマイ魚だったのかと目を開かれる思いがしたのである。
 イワシほど新鮮なものがうまい魚はない。鮮度が落ちるほどに味も落ちてくるのである。

 よく、土産物屋で、試食用にイワシの一夜干しがおいてあって、炭火で焼いてすぐに食べさせてくれるところがある。これがまたウマイのである。それで土産に買って家で食べるとそれほどではなくなるのも、まさに鮮度の問題なのであろう。
 居酒屋でイワシの刺身をおいてある時もあるが、これも鮮度が問題となる。その日の朝取れたものでないとこういううまさは出ない。

 そのころ、サバもイワシも大衆魚であった。両方とも鮮度が問題の魚である。特にイワシはあのころほど漁獲量が多くないそうであって、新鮮なものは、高級魚という感じさえする。

 そういえば、小さい頃田舎に行った時に、祖母がさばいてくれた刺身はイワシだったと思う。これに熱い湯をかけて「刺身茶漬け」にしたあれも忘れられない味である。

posted by mrgoodnews at 23:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 味のダイナミック・メモリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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