そういえば今の中学生や高校生の女の子たちは「女ことば」を使わなくなった、男性化していったというか、言葉遣い上の男女差がなくなったというべきか。
この本は、その「女ことば」の歴史と現在について書かれている。いろいろと思い当たるところがあった。
まず、「女ことば」として生まれたのに、今では男女差がなく使われている言葉に「おひや(冷たい水)」「おかか(削り節)」「おかず(ごはんの……。)」をあげている。これはもともとは宮中の女房たちが使っていた言葉なのだそうな。
100年ほど前に書かれた夏目漱石の「三四郎」に出てくる女性の話し方に注目する。「ほほほ」という笑い方に注目し、さらに「女は文末に何をこめる?」として女性特有の文末表現をあげる。
「〜わ。」「〜よ。」「〜てよ。」「〜て。」「〜って。」「〜ね。」「〜の。」「〜こと。」「〜もの。」
20年前くらいには、まだこの文末表現が「女ことば」の特徴であった。それが今、女子中高生の口からはほとんど聞かれない。それが最も大きい変化ではないか。
さらに200年前にさかのぼり、式亭三馬の「浮世風呂」を分析する。ここで明らかになったことが「おれ」「おら」は女ことばだったということである。
現代の女性も使う若者ことばのいくつかをあげている。
まず文末の「〜じゃん。」
「やっぱそうか」(やはり)
「きもい」(きもちわるい)
「ちげーよ。」(ちがうよ)
「ちがくない?」(ちがっていない?)
「………な人」といういいかた。
(私って甘いものが好きな人なんです)
「やべっ。まじカワイイ」
(やばいという言葉からきているが、これは「まずい」という意味から変貌している)
「関係ねぇーよ。」「知らねぇーよ。」「そんなことしねぇーよ。」
この本には出てこなかったが、最近気になるのは
「やりっぱ」「あけっぱ」ということば。
「やりっぱなし」「あけっぱなし」の意味である。これは20代の女の先生も使っている。
最後にこんなことも書いてあった。
「現代もっとも女らしい女ことばを使っている人たちは、おすぎやピーコ、美輪明宏、美川憲一など、いわゆるニューハーフと呼ばれる人たちではないか」
たしかに、彼らは「美しい女ことば」を使っている。