アリストテレスは、現象を生起する原因は4つあるとして「四原因説」をうちたてた。
先ず「質料(hyle)因」。これは事物を構成しているものであり、ラテン語の「マテリア」である。
つぎに「形相(eidos)因」。形相とは個物の形に内在する本質とでもいうべきもので、プラトンのイデアに近い。ラテン語では「フォルメ」がこれにあたる。
さらに「作用因」は運動や現象を引き起こす始原(arche)である。「始原因」ともいう。
そして「目的因」はそのものの目指す目的(telos)にあたる。
形相は個物に内在する。たとえば植物の種子には、植物の形相が「可能態(デュミナス)」として内在しており、それが発芽・生長をして「現実態(エネルゲイア」となるとする。
形相がより大きな割合で内在している存在ほど高級であるとして、もっとも高級な存在は、質料をまったく持たない「純粋形相=神:不動の動者」であるとした。もっとも根源的な始原であり、なおかつ究極的な目的でもある存在である。
このあたりの理論が、キリスト教との親和性をつくり出し、のちにトマス・アキナスらのスコラ哲学に採用され、ヘブライズムとヘレニズムの融合を可能にした「キー概念」となるのであろう。