2008年01月14日

「成人の日に」谷川俊太郎

 1月14日の朝日新聞の社説に「成人の日に」(谷川俊太郎)が紹介されていた。社説では一部抜粋であったが、ここでは全文を紹介しよう。

成人の日に 谷川俊太郎


人間とは常に人間になりつつある存在だ/かつて教えられたその言葉が
しこりのように胸の奥に残っている
成人とは人に成ること もしそうなら
私たちはみな日々成人の日を生きている
完全な人間はどこにもいない
人間とは何かを知りつくしている者もいない
だからみな問いかけるのだ
人間とはいったい何かを
そしてみな答えているのだ その問いに
毎日のささやかな行動で
人は人を傷つける 人は人を慰める
人は人を怖れ 人は人を求める
子どもとおとなの区別がどこにあるのか
子どもは生まれでたそのときから小さなおとな
おとなは一生大きな子ども
どんな美しい記念の晴着も
どんな華やかなお祝いの花束も
それだけではきみをおとなにはしてくれない
他人のうちに自分と同じ美しさをみとめ
自分のうちに他人と同じ醜さをみとめ
でき上がったどんな権威にもしばられず
流れ動く多数の意見にまどわされず
とらわれぬ子どもの魂で
いまあるものを組み なおしつくりかえる
それこそがおとなの始まり
永遠に終らないおとなへの出発点
人間が人間になりつづけるための
苦しみと喜びの方法論だ


 この詩の出典は「魂のいちばんおいしいところ」(谷川俊太郎詩集 谷川俊太郎/著 サンリオ 1990.12p.92-94)です。
 後半の10行ぐらいがいいですね。とくに「他人のうちに自分とおなじ美しさをみとめ/自分のうちに他人と同じ醜さをみとめ」というところが好きです。
posted by mrgoodnews at 22:14| Comment(0) | 詩、歌、祈り | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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