この映画は、日本国憲法誕生の真相を映画にしたものです。日本国憲法がGHQの押しつけであるとする主張に反論するために、憲法が作られた当時、鈴木安蔵という民間の憲法学者を中心とする憲法研究会が作った憲法草案の内容をGHQが取り入れたところを丹念に追っていました。
なかなか感動的でした。
実はこの映画は2008年度の「カトリック映画賞」の候補作として私がノミネートしたものです。
昨年9月頃、「9条の会」の人たちが私の隣の家で上映会をしていました。私はこれを見ることができなかったのですが、鶴見で上映会があったときに、妻と教会の人たちにすすめたら、これを見た人たちがみなとてもいい映画だとすすめてくれたので、ノミネートしたものです。このときも私は見ることができませんでした。
ノミネートした本人が見ていないのも何だしと思って上映会を探したら、11日に逗子で上映会が行われていることを知り、はるばる行ってみたものです。
加藤剛が演じる高野岩三郎、宍戸開演ずる白州次郎、そして憲法に男女平等の条文を盛り込んだベアテ・シロタなどとても興味ある人物が登場していました。そしてなによりも主人公の鈴木安蔵が魅力的です。
ただし、GHQと日本政府の憲法の草案をめぐってのやりとりの中で、天皇の位置や婦人参政権、男女平等の規定は問題となるのですが、9条はそう問題にはならなかったというところが意外でした。
鈴木安蔵の憲法草案では、「空白の条項」として不戦の誓いや戦力を保持しないという9条の規定には触れていなかったのです。
この9条の規定はGHQ民政局のほうで考え出されたということになります。
このあたりをもっと踏み込んで描けたらもっとよかったと思うのですが………。
今年のカトリック映画賞には
広島の原爆症の女性を扱った「夕凪の町、桜の国」、
満豪開拓団から中国残留となった日本人女性の生涯を描いた「夢の花」、
沖縄のひめゆり部隊の生存者のインタビューをもとにした「ひめゆり」
そして「陸に上がった軍艦」
が候補作として上がっています。
いずれも戦争を正面から取り上げた映画です。