手切れ、手際、手ぐすね、手癖、手練手管、手口、手配り、手心、手こずる、手ごたえ、手込め、手強い、手先、手頃、手探り、手さばき、手触り、手品、手締め、手酌、手順、手錠、手燭、手職、手数、てずから、手漉きの和紙、てんてこ舞い、手すさび、手勢、手塩……………。
いずれも、機会や装置に頼らずに心を込めて手を動かし人や物に接するときに使うことばで、日本語らしい美しい言葉がおおい。
「手当て」もまさにそのような美しい日本語の筆頭であろう。このことばを「Te-Arte」として「もったいない」に続く国際語にしようと提唱している人たちがいる。
3月27日の朝日新聞夕刊「ニッポン人脈記」に紹介されていた川嶋みどりさんもそのひとりである。川嶋さんはナイチンゲール賞を受けた元日赤看護大学の教授である。
(夫の)威が「胸が苦しい」というと、若い看護師は動脈血の酸素を測る機械を持ってきて、数値を読み、「大丈夫です」。川嶋はいらだった。モルヒネの量を増やしてすぐでていく看護師に「もう10分、見ていられないの?」
いちばんショックだったのは、せっかくの緩和ケア病棟なのに機械や薬ばかりで、肝心の手で触れるケアがほとんどなかったこと「背中をさするとか、体の向きを変えるとかで、すごくやすらぐ。ナイチンゲールをも言っていますが、看護不足が患者の苦しみをつくるのです」
カトリック教会にも「按手」という儀式がある。頭に手をかざし、その人の魂のいやしのために祈る儀式である。
ある新宗教では、この「手かざしパワー」を布教に利用している。
「手当て」という言葉はまさにその手の持ついやしのパワーの存在を裏付けるような言葉であろう。美しくも力強い日本語である。