
「神さまが………」シンシア・ライラント著 訳・絵 ささめゆき 偕成社刊
英語では「God Went to Beauty School」by Cynthia Rylant
「この本はシンシア・ライラントの4作目。神さまが人間世界で生活をしてみると、どんなことが起こるのでしょうか。神さまがビューティスクールに行った。神さまがお医者さんに行った。神さまが風邪をひいた。等々、ユーモアもある短編話です。」
という紹介がジュンク堂のホームページにありました。
たとえば
神さまがビューティスクールに行った
上手にパーマをかけられるといいなと
ビューティスクールに入学した神さまだが
途中でネイルアートに夢中になってしまった
それも卒業と同時にお店を出すほどの熱の入れよう
看板は
<ジムのネイルサロン>
本当は
<神さまのネイルサロン>と呼ばれたかったが、
そんなことをしたら
みだりに神の名をつかったって
いわれそうだし
神さまの店だったら
チップをおかなくてもいいんじゃないの
というお客があらわれそうだしね
それにしても
よくネイルアートにはまったもんだ
だいたいが人間の手が好きだった
自分がつくったもののなかで最高の傑作の一つが
人間の手だったから
そっとてのひらに
お客さんの手をのせて
ほっそりとした指を見ると
うっとりしてしまう
なんと関節の繊細なこと
まるで鳥の羽のよう
しばらく、じっと見とれて
すべての爪に気に入った色をぬる
そしてこういう
「なんとキレイなんだ」
神さまが言うのだから
これは本当
神さまが風邪をひいた
神さまはまるで風の子
これまで一度も風邪などひいたことはなかった
それで得意顔
ところがここにきて
鼻水ぐちょぐちょ
風邪をひいては
威厳も保たもてない
「汝、それをするなかれ」
と雷を轟かすところ
「汝、それをハクション!」
では、だれもが笑ってしまう
おまけに
神さまは
コミックとジュースがほしかった
さらにはベッドの側でやさしく看病してくれる
誰かさんもほしかった
それで古い友だちマザー・テレサに
電話したってわけ
お見舞いに来てちょうだい
ついでにコミックも買ってきて
もちろんマザー・テレサはその通りにした
マザー・テレサったら
苦しんでいる人を愛してくれるのだ
たとえそれが神さまであっても
というより
神さまだからなおさら大事に
するんでしょうけれどね
こういう調子である。
この「神さま」は、のんびり屋でやさしくて、好奇心と冒険心が旺盛で、あいきょうがあって、親しみやすく、でもさびしがりやで、ちょっとぬけていて、威厳がなくて……………。でもやっぱり神さまだと思わせるのですね。
シンシア・ライラントはアメリカ、ヴァージニア州1954年生まれの絵本作家、童話作家。
この作家の他の著作も読んでみたくなったし、英語のオリジナルも読んでみたくなった。