この映画は沖縄戦の「ひめゆり部隊」の生存者たちの証言をつづったドキュメンタリー映画です。
私は、映画賞選定のときに見たので2度目になります。でも1度目に見たよりも2度目に見た方が感動がずっと大きかったのです。
1度目に見たときは、上映時間の2時間10分が長くて、終わりの方では「まだ続くのか」という気持ちを抑えられなかったくらいでした。
でも2度目はそうではなかったのです。むしろ「もう終わりか」という感じでした。そして感動も2度目の方がずっと大きかったのです。これは、大きなホールでたくさんの人と見たというのがあるかもしれませんが、それだけではないようです。ある人は「私は3度目だけれど、3度目が一番良かった」という人もいたくらいでしたから。
この映画のあと「ひめゆり」の映画監督の柴田昌平氏の講演がありました。そのなかで印象に残った話を紹介しましょう。
このドキュメンタリーを撮影編集するに際して、心がけたことが2つあります。
ひとつは、「ひめゆり」生存者のかたがたに、できるだけ現場に行って語ってもらうことにしたことです。映画にはナレーションも解説もバックグランドミュージックも入りません。語りたいことを語りたいだけ語ってもらい、カメラを止めませんでした。誘導尋問みたいなことはせずに語られたことをそのまま受けとめるようにしました。
もうひとつは、この証言には「うらみぶし」がないのです。日本軍やアメリカ軍を告発するような証言がなかったということです。恨みや告発よりも、自分が生き残ってしまったことに後ろめたさをかかえていて、それが次の世代に託す想いとなって暗い過去に立ち向かっている姿は、むしろ「人間の尊厳や美しさ」を感じさせます。これは希望の映画なんですね。
今回の「カトリック映画賞」の候補作は「夕凪の街 桜の国」「日本の青空」「陸に上がった軍艦」「花の夢」でした。いずれも戦争物で、いずれもそれぞれに感動的でいい映画だったと思います。
でも、この監督の話を聞いて、この「ひめゆり」をカトリック映画賞として選んだのは正しかったと確信を持つようになりました。
お近くで上映会が開かれたおりには、ぜひご覧ください。この監督の話を聞いて見るとまた感慨も異なってくると思います。