それによると「ストレス」という現代人になじみの深い言葉は、カナダの生理学者ハンス・セリエ(1907〜82)が1930年代に生物の反応の中に「発見」したのだそうだ。
この言葉はもともとは物理学用語で「外力が物体に加わった場合の歪み・不均衡」のことをあらわすことばであった。これを心の状態に当てはめて「外部環境からの刺激によって起こる歪みに対する非特異的反応」という意味で使うようになった。この「ストレスを引き起こす外部環境からの刺激」のことをストレッサーという。
そして「ストレッサーに曝された生体が見せるストレッサーの有害性に適応しようとする一般的な化学的反応のこと」のことを「一般適応症候群(General Adaptation Syndrome)」といい、これは「防衛的反応(以前の状態への回復を目指す)」とも「適応的反応(新しい状態に合わせていく)」ともみることができる。
そのどちらの見方をとるかで、ストレスに対する対応のしかたが違ってくるであろう。セリエはストレスを「適応」のための心理的反応と見ていたようである。
これを読んで「そうか、ストレスは現代に『発見』されたのか」と感心したしだいである。これはノーベル賞もの「発見」だったのかもしれない。