その大会の基調講演は南山中学・高等学校の校長の西経一神父でした。彼は神言会という修道会の司祭です。この彼の基調講演はなかなかみごとなものでした。
「目に見えるものの奥に目には見えないものがある。その目に見えないものを見ることができるようにするのがほんとうの『宗教教育』である」一言で言えばこれが彼のいいたかったことのようです。
彼は、東京の晴佐久神父とならんでもっとも「説教」のうまい神父だろうと私は思います。
その西神父の書かれた本「君たちへ」を読みました。この本は西神父が学校の生徒たちに向かって行った「説教」を集めたものです。
ここにこんな話が載っていました。この話がまたスゴイのです。
藤沢にある聖園女学院という学校の隣に、「聖園子どもの家」という児童養護施設があって、そこにはいろんな事情で両親と離れて暮らさなければならない子どもたちが生活しています。
そこを訪ねていったところ、前の庭で少年が一人ボール遊びをしていました。
「こんにちは」
そう言って、その少年はきちんと頭を下げて挨拶をしてくれました。そしてすぐに言葉を続けたのです。
「だれのお父さんなの」
瞬時に、その少年の瞳の奥に広がるかなしみが深々とわたしの心にしみこんできました。そのかなしみが胸を突き、口をついて。思わぬ返事が飛び出したのでした。
「君のお父さんさ」
少年は両手で持っていたサッカーボールを脇にほおると、両手を出して私の手をぎゅっと握りました。小さなてのひらでした。ほんとうに小さな手のひらでした。
………(中略)……
その少年は私から手を離すと言いました。
「おじさん、いきなりきてそんなこと言っていると変なおじさんだって思われるよ。」
そしてフフフンとやわらかい笑顔を浮かべて、先ほどほおったボールの方に走っていきました。かなしみをやわらかく包み込んだ、そのあどけない笑顔で今もって忘れることができません。
もうまもなく4月を迎えるにしては、すこしばかり冷たい、しかしさわやかな風が聖園の丘をながれていました。
どうですか? スゴイでしょう。
「だれのお父さんなの?」という問いに、この子のお父さんはいないか、この施設を訪れたことがないのだなということを瞬時に読みとり、「君のお父さんさ」と切り返すこのセンスは並大抵ではないなと思います。
この子はきっとそのあとにシスターや友だちの前で、「今日お父さんが来たんだ」とうれしそうに言いふらすに違いないでしょう。そこまではっきりと想像することができます。
彼の「説教」のネタはこういうところから生まれてくる、つまりどこかで聞いたり呼んだりした話ではなく、彼自身がつくりだした「説教ネタ」なのですね。ここが彼の説教の魅力なのでしょう。
mrgoodnewsさんの母校でもある私の勤務校では、
月に1回、聖園訪問というのがあります。
私はその訪問引率担当を、5年間やっています。
3年前の、ちょうど今頃に訪問したときの記事が、
私のブログにアップしてありますので、
リンクさせていただきます。
http://ct.cocolog-nifty.com/magis/2005/09/post_4b56.html
また、mrgoodnewsさんがこの前まで勤務しておられた学校と
私の勤務校の生徒が合同で、毎年12月23日には、
「聖園招待」というクリスマス会を開催しています。
この企画はもともと田浦時代に、
戦争孤児を学校に招待してクリスマス会をするという企画が起源です。
コメントありがとうございます。
そうでしたね。
「聖園子どもの家」には高校生が通い続けていたのですね。
うちの生徒たちもクリスマスに行っていました。
そういえば、田浦時代に「施設の子どもたち」を学校に呼んで一緒に遊んだことがありました。イエズス会の外国人神学生がアコーディオンを弾いてくれたのが印象に残っています。
そのころ、大和に「Boys' Town」という施設があって、そこの子どもたちと野球の試合をしたこともあります。もっともこれは教会青年会時代だったかもしれない。ピッチャーの球が速くて、しかも鋭いカーブを投げられて、キリキリマイさせられたことも思い出しました。
今日娘の幼稚園(世田谷聖母幼稚園)で父親参観があり名古屋からいらした西神父の興味深いお話に出会えて著書が無いか調べていたところこのブログにたどり着きました。
娘の上に4年生の長男、一番下に1歳4ヶ月の次男が控えています。長男は過去に不登校の経験がすこしあり、勉強も大嫌いでこれからの子育てに夫婦で悩みながら毎日を過ごしている時に西神父のお話を聞けて少し何か(自分たちが見失っているもの)のヒントを頂いた様な気がします。
長男を受験競争に取り込むつもりは毛頭有りませんが、周りの環境が受験方向の流れの中で子供らしい成長へ導きたい気持ちです。親が不勉強だった分、これからの教育に役立てたい一心で神父のお話をもっと聞きたいと思います。
場違いかも知れませんが、西神父著書の『君たちへ』の入手方法をご存知でしたら教えて頂ければ助かります。
よろしくお願いします。
西先生は私の学校の校長先生で、よく話を聞く機会があるのですが、笑いを交えながら素晴らしい話をしてくださります。先生の言葉はひとつひとつが心にしみこんで来ます。本当に素晴らしいひとに出逢えたと思います。
今年入学したばかりの私ですが、学校中の先生と生徒が西先生を心から尊敬していることがよくわかるんです。
あたたかいいお話をユーモアをたくさん取り入れて色々話してくださる西先生はとても素晴らしい方です。
いつも感動させられます。
本当に素晴らしい方と
出会えたと思っています。
さて、このお話の解釈ですが
私は少し違うことを考えました。
西神父は
君のお父さんだよ
と答えたわけですが、
それは少年に嘘をつき
君のお父さん
と言ったわけではないと思います。
キリスト教の考えとして
周りの人々は皆兄弟という
考え方があります。
また、人々は皆
神の子どもであります。
西神父は
そういった考えで
少年に
君のお父さんと言ったと
私は考えます。
参考にしていただければ
幸いです。