
そういえば私は以前「福の神になった少年 −仙台四郎の物語」(丘修三著 佼成出版社 1997年刊)を読んだことを思い出した。これがあの小説の主人公だった仙台四郎なのかとあれを読んだときの感動がよみがえってきた。
帰ってさっそく図書館でこの本を借り出してもう一度読んでみた。
私は丘修三という人の児童文学が好きで、この人の書いた本を図書館で見つけると借り出して読むことにしているが、その中にあった本である。
丘修三の書いた児童小説は、どれも障がい者の少年少女を主人公にしている。

明治初期の仙台に実在した人物をモデルにしている。
ところが四郎のよる店は繁盛し、四郎を追い払う店は没落していくという事実を見て町の人に商売繁盛をもたらす「福の神」ともてはやされるようになる。
この物語には、明治初期の五稜郭戦争から自由民権運動、福島事件などなどの影響を受けた仙台におこるさまざまな歴史的事件も織り込まれている。
また、この小説にはハリストス教会(ロシア正教)のニコライ・カザトキンという司祭が登場する。彼は後に神田のニコライ堂を作った人物として名を残す。この司祭とその仲間たちはいつも四郎の見方であった。
丘修三の書いた児童文学の中でもっとも好きなのは「僕のお姉さん」という本である。私はこの短編小説を何度か中学生女子の前で朗読したことがあるが、クライマックスの所に来るといつも必ず感動のあまり絶句していまう。
また「歯型」という小説もなかなかすばらしい物語である。この本を読みながら「良心」をテーマにして考える授業をした。
ともに障がい者が主人公になっていて、この主人公たちからいつも何か大事なことを与えられるのである。
11月にもう一度仙台を訪れるので、そのときに地元の人たちから、もっと詳しい話を聞いてみたくなった。