2008年12月21日

いよさんとジグソーパズル

 母のいよさんは、89歳。記憶障害(私たちふうにいえば「物忘れ名人」)で、3分前にしていたことを忘れてしまい、ときどき「わけわかんなくなり」「私はどうしてここにいるの? もうかえらなくちゃ」といい出す。
 わたしたちは「どこへかえるの? ここはいよさんのうちだよ。ほら、お父さんの写真もあるし、ここにあるものはみないよさんのものだよ。」というのだが、そういうと、いよさんはあたまをかかえて、ともすると「こんなに頭が悪くなってしまって、もう生きている意味がない。死んでしまいたい」みたいなことをいう。

 いよさんが、そういうサイクルに入らないように、そういい出しそうになると、私たちがすることはいくつかある。
 ひとつは、おいしいお菓子、特にいよさんの好物を出して、「そんなこといわずにこれでも食べて元気を出そうよ」と言う。
「ねえ、おいしいでしょう。こんなにおいしいものを食べられるなんて幸せだよね」というと、いよさんもすぐに「死にたい」なんて言おうとしていたことをわすれてくれるのである。
 いよさんのお菓子好きと食欲に救われるのである。

 もうひとつ有効な手だてがある、それはジグソーパズルである。
 10年ほど前には、よく父と母と子どもたちで400ピースとか600ピースほどのジグソーパズルを、夜を徹して完成させたものである。
 しかし、いまのいよさんにはそんな複雑なことをするだけの根気も集中力もない。100ピースほどのジグソーもほとんど子どもたちがやってしまって、いよさんはそれを見ているだけになってしまった。
 それで、いよさんが単独でできるジグソーパズルを探してきて、やらせることにした。

ジグソー 簡単そうなジグソーパズルを探してきてやらせているうちに、もっともシンプルな20ピースもので、文字と絵が入っているものは何とか自力で完成させることができるが、絵だけだとかなり難しいということがわかった。解説には3歳の子供用と書いてある。
 絵だけの20ピースものができるかどうかの分かれ目であることが、判明したので、あれこれと探してきてはいよさんとすることにした。

 完成すると「できた!」といって、単純に喜んでくれる。その喜び方がとてもかわいく、いとおしいのである。
posted by mrgoodnews at 20:35| Comment(0) | 母の「介護」体験 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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