恥ずかしながら、私はこの俳人を先日の「天声人語」で初めて知った。その俳句がなかなかユニークなのである。この時代にこんな俳句を作れたということはやはり非凡なのであろう。
白泉は1913年東京生まれ。
わかいときは新興俳句運動の旗手として、数々の作品を発表した。
社会を風刺し、軍国化を批判する句風を色濃く出して、京大事件に巻き込まれ、逮捕される。戦争中に特高の目を盗んで多くの句を作ったが、戦後になって俳句から足を洗い、市立沼津高校の教員となった。
1969年55歳で没。
1974年「渡辺白泉全句集」が発表された。
街燈は夜霧にぬれるためにある (昭和10) ・
鶏(とり)たちにカンナは見えぬかもしれぬ (昭和10)
銃後といふ不思議な町を丘で見た (昭和13)・
繃帯を巻かれ巨大な兵となる (昭和13) ・
戦争が廊下の奥に立つてゐた (昭和14) ・
憲兵の前で滑つて転んぢやつた (昭和14) ・
夏の海水兵ひとり紛失す (昭和19) ・
玉音を理解せし者前に出よ (昭和20) ・
地平より原爆に照らされたき日 (昭和31) ・
まんじゆしやげ昔おいらん泣きました (『白泉句集』昭和50)
なかなか考えさせられるユニークな俳句が多いとおもった。私も俳句を作ってみるかという気になった。