・皺がよるホクロが出来る背がかがむ 頭は禿げる毛は白くなる
・手はふるう足はひょろつく歯は抜ける 耳は聞こえず目は疎くなる
・身にあうは頭巾襟巻杖めがね たんぽ温石しびん孫の手
・くどくなる気短になる愚痴になる 思いつくこと皆古くなる
・聞きたがる死にともながる淋しがる 出しゃばりたがる世話焼きたがる
・又しても同じ話に孫ほめる 達者自慢に人をあなどる
この狂歌の原作は、尾張藩士で俳文集「鶉衣』の著者として知られる横井也有(1702〜83)である。この人もまた興味深い人物である。
で、調べてみた。
武士として武術に優れ、また儒学を中心とした学問も究め、大番頭や寺社奉行などの要職を務めた。その一方、也有は若い頃から俳人としても名をなし、俳文家でもあった。『鶉衣』(うずらごろも)は、彼の最も名高い俳文集である。
也有の死後(天明3年(1783)82歳で亡くなる)、天明の狂歌師大田蜀山人が、たまたまその写本の一部を読んで感激し、『鶉衣』として世に出ることとなった。
也友の句としては次のようなものがある。
蝶々や花盗人をつけてゆく
しからるる子の手に光る蛍かな
柿一つ落ちてつぶれて秋の暮
など人間味あふれる温かいユーモラスな句を詠んでいる。
化物の正体見たり枯尾花
というのも也有の句である。