平戸島の紐差教会を訪れるのは今回で3度目である。とても美しい教会である。
修学旅行で最初に訪れたとき、夕方であった。ステンドグラスをとおして床に映し出される夕日がはっとするほど美しかった。
そしてこの教会にはパイプオルガンがあった。私たちを案内した主任司祭の神父さんは「もし良かったらあのパイプオルガンを引いてみなで聖歌を歌ってはいかがですか」といわれていた。もう一度訪れたときに生徒たちにパイプオルガンで歌を歌わないかと提案したのだが、実現しなかった。
2度目に訪れるとき、司祭館を訪ねたら「神父様はお昼寝中です」といわれて、やむなく先に根獅子の浜を訪ねてその後に教会によろうということにした。
あの時神父さんは、女子生徒の前でしきりに「結婚式はこの教会で挙げなさい」とすすめておられた。
あの神父さんが平戸の観光ポスターに登場していた。しかもスルタンという服(昔神父さんが来ていた服、今ではほとんど見かけない)を着て教会をバックにほほえみながら招いている写真が載っていた。わたしはこのポスターをJRの鶴見駅で発見した。
今はこの神父さんは転勤でこの教会にはおられなかった。
今回の訪問で出会ったのは、その教会の信徒の婦人であった。そのかたは嫁いだ家の先祖が集団改宗をした話しをしてくれた。
明治の10年頃、ある先祖のかたが重い病で伏せっていた。その病気を治そうとして祈祷師やお坊さんに加持祈祷を頼んだそうである。ところがそれでも治らない。そこで教会の神父さんにも頼んでみた。
ところが神父さんの祈りが効いたせいか、病気はけろっと治ってしまった。それを見て一族だけでなく村の人が集団で改宗したのだそうである。
このあたりの教会の信徒はキリシタンの末裔である場合がほとんどであるのだが、この教会は実は明治期以降になって集団改宗した信徒が多いのだそうである。
もう一つ、教会の前には神社があった。この教会を建てるときに、この神社にはずいぶん気を遣ったというはなしもしてくれた。「神社と教会の見える風景」というわけである。