昨日12日は、キリスト教ではイースターである。クリスマスとならんで、キリスト教の2大イベントであるが、こちらはクリスマスほど知られていない。キリスト教にとっては、むしろイースターの方が重要な祭りだといわれている。
カトリック教会ではイースターのことを「ご復活祭」クリスマスのことを「ご聖誕祭」と呼んでいる。「ご」という敬語がつくのは過剰な尊敬語であって、わたしは好きではないのだが………。(こういう表現を使うといとこたちは飛ばしてしまうであろうから、使わないようにしている)
イースターは毎年日にちが異なる。「春分後の最初の満月の次の日曜日」がイースターとなる決まりである。今年は金曜日が満月で、とてもきれいなお月様だった。昨年はイースターがえらく早かったように記憶しているが、今年は遅めである。
キリシタン時代に「バスチアンの日めくり」という教会歴が、潜伏しているキリシタンの間に伝えられていた。この「教会歴」のなかでもっとも大事な情報は、このイースターがいつなのかということであったのだ。
この日めくりが、平戸市生月の「島の館」に展示されていた。これはカクレキシタンの間で今も使われているものだそうである。
土曜日のミサは、聖土曜日の典礼とご復活の主日の徹夜ミサとそして洗礼式があるので一年で最も長い典礼である。わたしの教会では2時間かかった。
わたしの担当している「キリスト教入門講座」から久しぶりに洗礼を受けた人が出た。わたしの入門講座はなぜか長い間学んできたのに、洗礼は受けませんという人が多いのが問題であるが、彼は違った。うれしかった。
彼のクリスチャンネーム(洗礼名)は、トマス・モアだった。あの「ユートピア」を書いた16世紀の人物である。わたしは入門講座担当者として彼のために洗礼名をいくつか用意したのだが、その2つ目にトマス・モアをあげたら、かれもそれがいいと決めていたのだそうである。奇しくも一致した。こんなことはめったにあるものではない。
だいたい「ユートピア」でさんざんカトリック教会を皮肉ったトマス・モアがカトリック教会の聖人だなんてあまり知られていない。が、トマス・モアは、仕えていた国王ヘンリー8世が教会の忠告に従わずに離婚騒ぎを起こしたときに、トマス・モアはそれをいさめたために、ロンドン塔に幽閉され、ギロチンで殺される。
ヘンリー8世はこのときにカトリック教会を批判して国教会を開き、みずから国教会の首長となった。そしてトマス・モアは聖人となった。
洗礼を受けた彼は、イースターの時に配られるものを「これは何ですか?」と聞いてきた。
「あ、それはまだ教えなかった。それはイースターエッグと呼ばれているゆで卵だよ。ゆで卵に色を塗ったり飾りを付けて配るという習慣がある。あたらしいいのちの誕生のシンボルなのかな」
「食べてもいいのですか?」
「もちろん食べるためのものだから。早めにたべたほうがいいよ」
とそんなやりとりがあった。新クリスチャンの最初の質問だった。