この書は宮大工や船大工などの木の職人の技について書かれた本である。これがまたいい。
たとえば
石屋さんが石を割るのに振るげんのうの柄にはカマツカという木を使います。地方によっては柊や花ももなどを使いました。それは石を割った時にしない手に直接衝撃が来ないようにクッションがあり、かつ折れることのない丈夫な木だったからです。
長い経験の末にそうした木を見つけて使ってきたのです。
こけら割りの職人さんが使う槌はイタヤカエデ、大工さんが使う鉋の台はカシ、舟をこぐ櫓もカシ、鍬などの農具の柄もカシです。これは硬くて丈夫だからです。
鋸の柄には桐を使いますが、これは長い間使っても熱を持たないから。柄には籐が少しだけ巻いてあるのは滑り止め。
風呂桶は水に強い木としてカヤ、コウヤマキ、檜、ヒバ、杉。川船を作るには杉。
寺の塔や堂をつくるには檜。爪楊枝はクロモジ。工事現場に使う杭や土台は松。
それぞれ木の性質を考え、生かして使ってきたのです。
そういえば、前に鉛筆の木はエンピツビャクシンという木だと書いたことがある。あの鉛筆を削る独特の香りを発する木である。
このほかにも、この道具にはこの木が使われているという例がたくさんあるだろうと思う。それを調べてみたい。木というものの魅力がそこに凝縮していると思うからである。
丹沢の札掛けの山荘に行った時に、5センチ角でながさ30センチくらいの角材となったいろいろな木がおいてあった。
木の色がみな違っていて美しかった。
でもこれは木の色の違いを見るためではなく、実はそれを固い床の上に落とした時の音を確かめるために置いてあったのである。
それで実際に試してみたところ、なるほど、確かにみな音がちがう。もっともいい音がしたのは(名前調べ中)の木であった。澄んで高い音がしたのである。
そういえば木琴はなんの木でできているのであろうか。興味あるところである。
今度札掛け山荘に行く時には、ビデオカメラを持っていって、木を床に落とした映像と音を撮影しなければいけないと思った。