2006年05月07日

「匂」「臭」「香」「芳」

 日本語には「におい」を示す漢字が4つある。
 これも「ヘーベリアン」の特集から知ったことである。

 まず「匂」。「匂い」の「に」は赤色を意味する「丹」、「ほ」は「穂」。「丹穂」が転じて「におい」がほのぼのと立つ意味となった。もともとは視覚的な表現であった。「匂い」は一般的にいいにおいに用いる。
 つぎは「臭」。「自」と「犬」とがあわさってできた漢字で「犬が鼻でにおいをかぐ」ところからきていて、「くさい」とも読むように一般には悪いにおいのことをいう。
 次は「香」。「黍(キビ)」と「甘(ウマイ)」の合意文字。キビを煮ているときに漂うよいにおい=熟した穀物の味の良さを意味している。これもよいにおいである。
 最後に「芳」。「くさかんむり」が示すように草の匂いが四方に広がるところから来ている。これもよいにおいである。

 漢字から見ても植物性のにおいから来ていることに気づくであろう。

 話は変わるが、ビールと発泡酒といわゆる「第3のビール」とでもっとも違うのは「かおり」であろう。やはりビールがもっともかぐわしい。「第3のビール」にはほとんどこの香りがない。
 ただし面白いことに、ビールでも香りを感じられるのは、飲む前であり、一口でも飲むと香りは消えてしまうのである。
 これはビールだけでなく、みそ汁やご飯の香りについても同様である。香りを大事にする飲み物や食べ物に共通する性質であるらしい。
 嗅覚というのはもっとも順応しやすいものなのである。
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2006年03月23日

鉛筆とペンとワープロによる文体の違い

文章を書くのに、鉛筆で書くのとボールペンで書くのと、またワープロを使って書くのとでは、文体がかなり異なってくるのではないか。文体だけではなく、書く内容もかわっていくのではないかとさえ思う。

まず、一度書いたものを簡単に消して書き直すことができるかどうか。一番簡単なのはワープロであろう。そして鉛筆やボールペンが続く。ボールペンや万年筆で書く時は、それが直せないものであるだけに、文字として書きあらわす前に頭の中でしっかりと吟味して書いているはずである。ワープロの場合はとりあえず文字におきかえて、よみ直して文章をただしながら、書いていると思う。

文章を書くのにどちらが速いかというと、案外ボールペンで書く方ではないか。一度書いてみてなかなか納得のいくものができずに消したり書いたりするより、少々満足できなくても、なおすのがめんどうくさいとしてあきらめることの方が、優柔不断の人にとっては速く文がしあがる。
集中力、決断力、忍耐力、根気やねばり強さ、完璧を求める心、あきらめの早さ、おもいきりのよさ、書く人のこんな性格も文体に反映するであろう。
文章はなおせばなおすほどよくなるとは限らない。あれこれ考えなおしたあげく、一番はじめに書いたものがよかったということもよくある。

昔、年賀状を百枚、手書きの文章で一枚一枚書いたことがあった。二百字くらいの文を百回くりかえして書いてみると、文章がどんどんかわっていく。こうかいてみるとどうなるだろう、やはり、こうした方がよい、ここはどうだろう、頭の中で文章と対話しながら文章を練っていく。これだけくりかえすと最後の方は安定していくものである。はじめに書いたものとよみくらべてみると、確かに表現はまろやかになったが、はじめのころの荒削りのダイナミズムがなくなっている。

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2006年02月08日

「いのち」という言葉

中3の「総合」は「いのちの詩」というテーマで授業を行っています。
ここで「いのち」という言葉を説明します。

この語源を探ってみるとどうやらヤマト言葉のいのちは「息のうち」とか「息の道」という言葉からできたようです。「息をしていることがいのちがある」ことの表れだと古代の人は考えたのでしょう。

このいのちという言葉には漢字の「命」という語が当てられました。でも「生命」と書いて「いのち」と読ませる例は結構あるのですが、この漢字一字で「命(いのち)」という使い方はあまりしないようです。

漢字の「命」は「口」+「令」という合成語です。「命」には「命令」のように「天の仰せ」という意味があります。「令」は天からありがたいものを授かっているという意味のようです。
ここからわかることは、漢字の「命」には天から授かったものという意味が込められます。
これにやまとことばの「いのち」という意味があてはめられました。

「息を引き取る」という使い方をします。これもなかなか意味の深い言葉ですね。息を引き取った人があとを受け継いでいくということなのでしょうか。

 いのちという言葉は美しい日本語の一つだと思います。


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2005年11月25日

ここがヘンだよ。女と男の日本語

前に「女ヘンの漢字」について考えたが、今日は日本語の「女と男」に関する男女平等ではない表現について考えてみよう。これがけっこうたくさんあるのである。

●主人、亭主、旦那 日本の家制度の名残、家長は「主人」妻は夫の家来なのか?
●家内、女房、細君、嫁さん 夫が妻を呼ぶとき
●夫人 キュリー夫人 首相夫人 重要人物の妻という意味で使われる
●奥様、令夫人、令室 他人の妻を呼ぶとき 妻は家にとどまるという響きあり
●愚妻 愚夫とはいわないところが不均衡
●未亡人、後家、寡婦、おとこやもめ 「未亡人」とは夫はなくなったのに「まだ亡くならない妻」の意味 生きていてはいけないような感じ
●妻がいる男性は「妻帯者」という表現があるが、「夫帯者」とはいわない
●「人妻」は「他人の妻」つまり「人」は男である。「人夫」という表現はない。
●看護婦、助産婦、保健婦、保母などは「看護師、助産師、保健師」から「看護士。助産士、保健士、保育士」へ。医師、教師は「師」だけど、弁護士、司法書士は
●女流文学、女流作家、女流詩人、女流建築士、「男流」はない。
●女医、女教師、女子高生、婦人警官 すべて「男医」などはなく非対称
●処女作、処女地、処女航海、処女峰、処女林
●サラリーマン、ビジネスマン、OL、
●男女、夫婦、夫妻、オスメスはいずれも男が先。雌雄は? 善男善女、美男美女
●「雄」は男の意味とすると「英雄」は女性でもなれるのか?「女傑」「雄飛」「雄大」なのに「雌伏」「雌雄を決す」はどちらの勝ち?
●「女々しい」は「男を侮辱するのに使われる」が「雄々しい」は男の誉め言葉
●一人称二人称三人称の呼び名 「おれ」「僕」は男言葉「私」は? 彼/彼女/彼らは
●「俳優、男優、女優」
●「青少年」は男女を含むのに「少年」は男、しかし「少年法」は女子にも適用される。「父兄」「乙女」はあるが「おのこ」はない。「帰国子女」は男の子も含まれるはずなのに。
●「美人」は女性。「美人アナ」「美人ゴルファー」美男、美女はあるけれど。
●「看板娘」「マドンナ議員」「女房役」は男。
●「男勝り」は女、「女の腐ったの」は男
●「女のくせにそんなかっこうして」「男のくせにめそめそしないの」「女は出しゃばるな」
●「女だてらに」「大の男が」
●「壁の花」と「壁のシミ」ダンスパーティー
●「母船、母国、母なる大地」
●「でかい、食う、やばい(やべー)」は男語だが、最近は女も使う
●「男の中の男」「女の中の女」「男の風上にもおけぬ」「男冥利に尽きる」「よくぞ男に生まれける」
●「男は度胸、女は愛嬌」
●「男は理性的、女は感情的」
●ベビー服は女の子はピンクで男の子はブルー。ランドセルは? 男の子が赤いランドセルを背負うとたぶんいじめられる。
●男は理系に強く、女は文系に強い?
●女は機械に弱い
●「女は家庭、男は仕事」性別役割分業の固定化
●女の子はジーパンをはけるのに、男の子はスカートをはけない?
●出席簿は男の子と女の子と別れていて、しかも男の子が先に書かれている。

まだまだありそうですね。

3.英語の改革 degendaring
● man は男であるとともに「人」を意味するが、人に「man」は使わないようにする
  chairman → chairperson → chair、
fireman → firefighter  
  policeman → police officer  
repairman → repairer
  man → human being  
mankind → humankind  
man →person
●「Miss Mrs.」は「Ms.」
●ハリケーンには男性の名前も使われるようになった。
●「父なる神」から「父であり母である神」へ。

4.日本語改革の原則
●一方の性を持ち上げたり、見下したりする語は男女平等ではない。「雄々しい」「女々しい」
●一方の性を標準とし、他方を特殊といい言い方は男女平等ではない非対称な表現例「女流作家」は「男流作家」とはいわない。
●男女それぞれを示す言葉はあるにはあるが、両性を含む用語がないのは、平等ではあっても一方で全体を表現しようとすると不平等となる。「保母、保父」
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2005年11月23日

使いたくない言葉 その1「がんばろう」

教員として、生徒に向かうときに、できるだけ使いたくない言葉があります。

それは、生徒を励ますときの「がんばって」と「勉強」という言葉です。

いずれもとても便利な言葉なので、つい使ってしまいますが、私は自らにこの言葉を「禁句」としようとこころがけています。

「がんばって」「がんばろう」は、ひとをはげますときにこれほど便利な言葉はないとも言えるものです。
多くの日本人はこの言葉に励まされて「がんばって」しまうのです。時にはがんばり過ぎちゃうのですね。
このガンバリズムが日本を豊かにしたエネルギーだったのでしょう。

ところがこの「がんばる」という言葉、英語に訳そうとしてもなかなか適当な訳語が見つからない日本語独特のことばのようです。
ネパールの言葉には、そもそも「がんばる」という概念がないというのをどこかで聞いたことがあります。

「がんばる」というのは、「力を入れる」という意味でしょう。緊張させる言葉なのです。
ところが英語では、人を励ますときに「Take it easy!」という励まし方をするといいます。つまりこの言葉は「がんばる」と違って「力を抜く」「リラックスする」「気楽に行く」という方向性を持つ言葉なのですね。

緊張させる「がんばる」よりも「力を抜いて、のびのびとさせる」方が持っている力を発揮できるのではないかと思えるのですね。

みんな、がんばり過ぎちゃっているから、むしろ「がんばらなくてもいいよ」「がんばるなよ」「気楽にいこう」という方が、励まし方としては有効なのではないかとさえ思います。

そうは思うものの、たとえばスポーツをやっているときや、試験前に勉強するときにはやはり「がんばれ!」としかないのでしょうか?

適当な励まし言葉をお教えいただけたら、幸いです。


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2005年11月18日

よく使われる仏教語

私たちが日頃何気なく使っている言葉に、けっこう仏教からきた言葉が多い。
それを思いつくままにあげてみよう。

まずお釈迦様にまつわる言葉から。
シャカリキになって(お釈迦様は力持ちだった?)
おシャカになる(作品が水に濡れたり、火の加減を間違えて使い物にならなくなること)
オダブツになる(仏陀の倒語?)

ちょうだい(頂戴は仏の教えや経典などのありがたいものを頭に載せていただくこと)

えこひいき(釈迦は自分に寄りかかってきたものをかわいがった)

ゲンを担ぐ、ゲン直し(験とかく。縁起(えんぎ)→ ぎえん → げん となった)

立派(自分の真義を立証する「能立」ということばと他説を論破する「能破」ということばから「立破」ができ、これが「立派」となった)

がらんどう、ガランとした(伽藍からきた)

ホラをふく(法螺はもともとありがたいお話しなのだが……………)

おおげさな(袈裟は本来はつぎはぎした布でできた粗末なものであったのが、だんだんきらびやかで豪華になりおおげさになった)

だらしのない、ふしだらな、じだらくな(もともとは「秩序」を表す梵語スートラが「しだら」になり「だらし」となったらしい)

機嫌を取る(譏嫌戒(ひとを譏(そしる)な)からきたことばらしい)

おかげさまで(仏の加護により)

ないしょの話(内証は心の内に悟った真理を表向きにしないでしまっておくこと)

油断(ある王様が家来に油の入った鉢を持たせて町を歩かせる罰を科した。もし一滴でもこぼしたらいのちがないとおどしたという仏典にあるお話しから生まれた)

つっけんどん(いつもとげとげしく相手に対する思いやりのない様)

しょっちゅう(初中後からきていて、後がぬけた)

とにかく(兎に角、ウサギに角があるはずがない、ありえないことから)

むしょうに(無性に)

まだら模様(曼陀羅から来た)

仏頂面
有頂天
勘定、勘弁(経典の数を数えることから)
うやむや(有耶無耶)
摩訶不思議
おっくうな(億劫)

チャラにする(口からでまかせを言ってうまくごまかすこと)

……………。

こうやってあげてみると、どうもあまりいい意味の言葉がないような気がしますが、どうでしょうか?





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2005年11月08日

女ヘンの漢字

中学2年生女子に「女ヘンの漢字」をあげてもらった。
なんでこの漢字が「女ヘン」なのかという疑問を誰もが抱かざるを得なかったようである。
このはなしはちっとも Good News ではないが……………。

奴 人に使役させる男女 己を卑下していう言葉
好 母親の子どもに対する思いから来た漢字
奸 偽るという意味を持つ よこしま
妨 女は妨げなのか
妍 「妍を競う」   
妙 きわめてよいという意味 女ヘンには珍しいいい意味
妖 「なまめかしい」のは「あやしい」のでもある
姑 女が古くなる 男は古くならないのか
始 胎児の「胎」とおなじようにいのちの始まりから来た
姓 これは女系社会の名残か
嬌 なまめかしい
妬 ねたむ やく 
姻 女のよりどころ?
姦 「かしましい」という意味ならまだゆるせるが………
姥 女が老いる 男が老いるという言葉はない
娯 楽しいという意味
嬉 なぜ女が喜ぶのだろうか 男も喜ぶのではないか
娘 女が一番良いとき
婉 「しとやか」若く美しくみめが良いという意味もある
婚 昔結婚式は黄昏(たそがれ)時に行った。
娼 遊び女
婦 女は家で箒を持つ
媒 男女の結婚を取り持ったのも女
媛 「才媛」は賢い女性のこと
婿 男なのになぜ女偏なのか
嫁 よその家にはいる女
媚 媚びるのは「女が眉を動かす」
嫌 好き嫌いの感情はおんなのもの
嫉 ねたみややきもちは女のもの?
妄 みだり うそ になぜ女がつく
安 女が家にいると安心?
宴 宴に女はつき物?
怒 ここにも女がいる
努 努力の努の字はなぜこういう字なのか?
汝 もともとは女言葉だったのか?
威 ここにも女がいる
要 女が腰をぎゅっと締めるところから来た
委 女が男にすべてを委ねるのか?
婆 波は「しわ」の意味らしい
嬲 すごい字であるが、この字はどのクラスでもあがった。中学生の女子は知っている子と知らない子に別れた。「なぶりもの」という意味を辞書で調べている子がいた。

まだあると思いますが、それにしても「男ヘン」は「嬲」しかないのに「女ヘン」はなぜこんなに多いのか? 
しかもかなり問題ある意味で使われている言葉が多い。

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2005年10月22日

It's Up to You!


2005102205419ae0.JPGIt's Up to You!

It's up to you. は、あなた次第です、あなたが決めるべきです、という意味で、相手があなたに判断を委ねているときに言うセリフです。

実は、これは私の学校の体育祭で生徒達が選んだスローガンだったのです。
英語の時間か何かにこの言葉を教えられたのでしょう。
で、それを体育祭のスローガンに採用したのではないかと思います。

「みんなあなたにかかっている」というような感じですね。
確かになかなかいい言葉です。
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2005年10月05日

やって見て言って聞かせて……………。


2005100516d1b8d3.JPGダーソーの100均ショップでこんな言葉の書かれた額を見つけました。

この言葉、教育の原点を示しているようなみごとな言葉ですね。
確かうちの学校の職員研修会で某講師が紹介したので、かすかに記憶に残っていた言葉です。
ずっと前に「天声人語」でも紹介されたことがあるような、これもかすかな記憶です。

誰の言葉か、インターネットで検索したら、どうもこれは山本五十六の言葉らしいです。

う〜む。
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2005年09月29日

present という英語の言葉

英語の present という言葉がおもしろい。
これにはいろいろな意味がある。

まず名詞。
いうまでもなく「贈り物」の意味である。
「現在」という意味もあるらしい。

次に動詞
1.贈り物をする
2.紹介する、提示する
   この意味の名詞が presentation 
   PowerPoint は presentaion soft である。
3.差し出す

つぎに形容詞
1.現在の
2.出席の いあわせた 反対語は absent (欠席の)
3.面前の




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2005年09月28日

情けは人のためならず

「情けは人のためならず」ってどういう意味か?って誰かに聴いてみると、だいたいが
「人に情けをかけてやることは、その人を甘やかすことになり、その人のためにならない」
という答えが返ってきます。

これってとても冷たくて悲しい解釈ですね。
どうしてこうなっちゃったのだろう。

本当は
「人に情けをかけることは、その人のためだけではない。まわりまわって自分に返ってくるものであり、自分のためでもあるのだ」
というとてもステキな意味であるはずです。
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2005年09月26日

responsibility (= 応答できること)は「責任」ではない

英語の responsibility を「責任」と訳したのは誤訳ではなかったのかと、私は思うのです。

もともとの英語の意味は
respond =応答すること
ですから、
responsibility =応答できること
というようになるはずです。

キリスト教的にいえば、「神の呼びかけに応えられること」なのです。

それを誰が訳したのか「責任」とした。
「責任」というと、自分のなしたことの結果の後始末をできること、あるいは失敗した時の責めを負うという意味になってしまいます。
「失敗したときの責任をどう取るのだ」というのは、何か新しいことをするときに、それをやめさせようとする定型文句です。

つまり、本来 responsibility というのはもっと前向きで、積極的な言葉であるのに対して、「責任」というのは明らかに後ろ向きで消極的な言葉です。

なんでこうなってしまったのか?


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2005年09月21日

人間=anthropon=上を向く人

ギリシャ語で人間のことを anthropon というのだそうである。その意味は「上を向くヒト」という意味であるらしい。

古代ギリシャ人は、人間が天を仰ぎ、天に祈りを捧げるというところに人間の本質を見たからであろうか。

ちなみに英語で「人類学」のことを anthropology というのはこのギリシャ語に由来している。
また philanthoropy というのは「博愛・人類愛」を意味する。
phil(=愛) + anthropy (=人類)という合成語である。

考えてみたら深い意味を持っている言葉である。
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2005年08月19日

「世話」と「面倒」

「世話をする」というのと「面倒を見る」というのは、両方とも、英語で言えば "take care" の意味ですが、よく考えてみたら、この漢字が不思議な熟語なのですね。
 なんで「世の話し」で、なんで「面を倒す」なのでしょうか?

 で、さっそくいろいろと調べてみましたら、いろいろな発見がありました。こういう発見があるから「言葉」っておもしろいのです。

 「世話」には
1.通俗の話し 例 下世話な話し
2.世間の人の言いぐさ
3.人のために言葉を挟む
という意味があり、この3の意味から「人のために尽くす」という意味が生まれたという説がひとつ。

「世話をする」の「せわ」は「せわしい」の「せわ」で「忙」という漢字が当たるはずだったという説がひとつ。

さらに、仏教語に「セーヴァ」という言葉があり、これに「世話」という漢字をあてた。つまり「世話」は当て字という説。
ちなみに、この仏教語は英語の「serve」や「save」と語源が同じだとか。
仏教語のもととなるサンスクリット語も英語もおなじインドヨーロッパ語族によってもたらされたものだから、共通の発音をする言葉が結構あるらしい。

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2005年08月18日

「せわしい」と「せわしない」どちらが忙しいの?

日本語にはなかなかおもしろい表現がたくさんあります。
どうしてこういうのだろうか?と考え出すときりがないし、自由に話せなくなってしまいそうなのですが、今回はそんな日本語表現をひとつ。

「せわしい」と「せわしない」という二つの表現は、反対語みたいな漢字の表現ですが、これが同じような意味なのですね。
新明解国語辞典によると
「せわしい」
1.用事が次から次へとあって、ひまな時間が少ない
2.ひとつの動作が終わるとすぐに次の動作にうつって落ち着かない様子
「せわしない」
「せわしいの強調表現」なのだそうである。
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2005年07月11日

<創発=emergence>について

 シナージーと並んで興味を引く概念は「創発(emergence)」であろう。
 「創発」には emergence という英語が当てられている。突発現象とでも訳したらいいのだろうか。この概念は、あるところから突然生命を持って生きだしたかのように自立的に動き出すところから「人工生命」を定義するときに使われる。

 「人工生命」を研究する専門的な立場からの「創発」とは「総体を構成する各部分間の相互作用により,上位レベルの特質や振舞いが現出する現象」あるいは,「上位レベルが現出すると同時に逆にその上位レベルが下位レベルを制御して新たな秩序を生む現象」というのがひとつの定義である。
 つまりは個体がそれぞれに起こしたアクションが個体間の相互作用の繰り返しによってあるグループ、つまりは社会におけるひとつのアクションを引き起こす現象、またはその逆の現象などを創発とよぶ.
 「単純なものが相互作用しあって複雑な挙動を示す(発する)」現象である。「複雑系」と呼ばれる分野の解き口の重大なひとつとされている。

 たとえばコンピューターにこういうインプットがあったらこういうアウトプットを出すといういくつかのプログラムを作るとする。それによってそのなかのあるプログラムを実行するとその結果が次のインプットとなり、プログラム同士がからみあって自立的に動き出すことがある。これが人工生命や社会システムのモデルとなり、さらに人の想像や創造という知的行為を作り出していくモデルともなる。

 コンピューターの初期のゲームにライフゲームというのがあったことを思い出す。これはセル・オートマトンと呼ばれるもっともシンプルな人工生命といわれている。セル・オートマトンがどういうものなのかを簡単に説明すると、マスが並んでいて(何次元でもよい)、各マスは周りのマスの状態に応じて変化していく、というものである。
 
 人が文章を書いたり、小説のストーリーを考えるときには頭の中でこのような「創発」現象を意図的に作り出していると言えるのであろう。ストーリーがひとりでに動き出して作者の考えるところからはなれ次のストーリーや論理展開を自動的に生成するのである。

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シナージー現象について

 シナージー効果とはひとことでいえば「協力現象による相乗効果」のことをいう。シナージーとは「全体的効果に寄与する各機能の協力作用」であり、ドイツのハーケンという人の定義によれば「多くのサブシステムが協力して働いて、システム全体が巨視的スケ−ルで新しい構造ないし機能をあらわす現象を研究する分野」である。
 わかりやすくいえば、「1たす1は2プラスα」の効果を出すこと。このαを極大化するためにはどのような協働を行えばいいのか?それが課題となる。
 集団の中の異なった人との協同現象を意味するだけでなく、同一人物が異なった分野の研究を同時並行で行い、その相互の分野によい影響をもたらすというのもシナージーである。
 例を挙げればシュヴァイツアーがあげれられる。彼は31歳までは神学者であり、かつオルガンの名手でもあった。神学の研究をして疲れるとオルガンに向かい、オルガンで疲れると神学でいやすというシナージーを生きてきた。そのシナージーは突然「創発」現象を起こす。31歳の時に彼はアフリカの医療の現状を知り医学を学び始め、そしてアフリカに旅立つのである。
 物理現象や生命現象、大脳生理学や記憶のメカニズム、ファッションや選挙、企業経営、さらに三島の「午後の曳航」という小説の中において、このことなったふたつの要素のシナージェティクな関係を見ることができる。
(「協力現象とはなにか ―<1+1=3>を可能にする発想―」高辻正基著 講談社 1980年)


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2005年06月08日

怒りの日本語表現

中学3年生の「総合」の授業で「怒りの心理学」というテーマで授業をしました。
まず黒板に以下のような言葉を書いて、空欄にはいる言葉を考えてもらいます。
ちょっと国語の授業みたいですが、でも国語ではこういう聞き方はすることはないでしょうね。
つぎの表現は「怒り」についての日本語表現です。日本語にはこの表現が大変豊かなのに気付くでしょう。

(   )のごとく怒る  
(   )になっておこる  
怒り(   )に発す 
(   )が立つ     
(   )をたてる     
目に(   )を立てる
(   )を立てる    
(   )が煮えくりかえる 
(   )と怒りがこみ上げてくる
(   )に据えかねる  
(   )に来る      
(   )を起こす
(   )に触る     
(   )の虫が騒ぐ    
(   )が走る
(   )の緒が切れる  
(   )を踏んで悔しがる 
(   )をして悔しがる
(   )天を衝く    
そう(   )になるなよ

どのくらいできますか?
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2005年06月02日

「将来」と「未来」

高2の「倫理」の授業での、ある日の生徒達とのやりとりです。

「『将来』と『未来』はどちらが近くてどちらが遠い先のことかわかるひと?」
「同じ意味ではないのですか?」
「君たち、漢文でならわなかった?」
こう言うと勘のいい子はすぐに気づきます。
「そうか、未来は『未だ来たらず』で、将来は『将に来たらんとす』なのか。こう書くと全然意味が違うじゃん。つまり将来の方が近いのですね。」
「そういえば、『遠い未来』とはいうけれど、『遠い将来』というのはあまりいわない。でも『近い未来』とか『近い将来』というのはよくいうよね」
「英語では両方とも future だけれど、たとえば『死』というテーマは若い人には『未来』のことでも、お年寄りには『将来』のことなんだろう。使う人の感覚によって知らず知らずのうちに使い分けているのだろうね。」
「そうかあ、ことばっておもしろーい」

とまあ、こんなやりとりがあありました。



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