これも「ヘーベリアン」の特集から知ったことである。
まず「匂」。「匂い」の「に」は赤色を意味する「丹」、「ほ」は「穂」。「丹穂」が転じて「におい」がほのぼのと立つ意味となった。もともとは視覚的な表現であった。「匂い」は一般的にいいにおいに用いる。
つぎは「臭」。「自」と「犬」とがあわさってできた漢字で「犬が鼻でにおいをかぐ」ところからきていて、「くさい」とも読むように一般には悪いにおいのことをいう。
次は「香」。「黍(キビ)」と「甘(ウマイ)」の合意文字。キビを煮ているときに漂うよいにおい=熟した穀物の味の良さを意味している。これもよいにおいである。
最後に「芳」。「くさかんむり」が示すように草の匂いが四方に広がるところから来ている。これもよいにおいである。
漢字から見ても植物性のにおいから来ていることに気づくであろう。
話は変わるが、ビールと発泡酒といわゆる「第3のビール」とでもっとも違うのは「かおり」であろう。やはりビールがもっともかぐわしい。「第3のビール」にはほとんどこの香りがない。
ただし面白いことに、ビールでも香りを感じられるのは、飲む前であり、一口でも飲むと香りは消えてしまうのである。
これはビールだけでなく、みそ汁やご飯の香りについても同様である。香りを大事にする飲み物や食べ物に共通する性質であるらしい。
嗅覚というのはもっとも順応しやすいものなのである。