けれども彼がなぜ棄教し、その後どういう人生を送ったのかは明らかになっていない。そこに彼の生涯について小説にする面白さが出て来るのかもしれない。
前に青山敦夫作の「千々石ミゲル」を紹介した。そこでは彼はたまという女性と結婚して夫婦ともに棄教したことになっているが、信仰は守って生きたというように紹介していた。
この小説でも似たような設定になっている。ミゲルはたまという女性と結婚し、夫婦ともに棄教したことになっているが、心の中で信仰は捨てていなかったという設定である。
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私たちは、すでにこの時点で「自殺」ではなく「自死」ということばを使いました。それは「自殺=自分を殺す」という言葉には、その言葉自体に当事者を責めるような響きがあるため、より中立的な言葉として「自死」のほうが良いという考えからでした。自死者は「自ら死を選んだ人」というよりも「自ら死を選ぶしかないところまで追い詰められた人」だということも次第に明らかになってきました。