「100校プロジェクト」が1995年に始まり、まず最初にしたことは学校ホームページの開設だった。神奈川県の中学や高校では2〜5番目の開設という早さであった。写真と文字によるホームページで、HTMLをエディターで書き上げていくという飾りもデザインもない素朴なものであった。
そして1996年、わたしはそのころ高2の担任であったので、自分のクラスのクラス日誌を公開してみようということになった。
クラス日誌は、日直の生徒が一日の記録として毎日ノートに書く。授業の様子やクラスの雰囲気、一日の感想などが書かれているのだが、これを週末に持ち帰り、1週間分をまとめて私がHTMLにしてサーバーにアップロードするということをやり続けた。
できるだけ生徒が書いたものをそのまま載せた。中には生徒が学校のすることに文句を言ったところとか、担任がした失敗とか、これ載せたらまずいかもと思われるものもあったのだが、できるだけそのまま載せた。
これがよかったのだと思う。このページはけっこう読まれたようである。何よりも学校の飾らないありのままの姿が現れているところがよかったのだと思う。これよりもよい学校紹介はないのではないかと思うくらいである。
よく読むとこの担任の学級運営のまずさや、生徒がそれに不満を持っているところなども読みとれてしまうのであるが、そこは恥を忍んで書き続けた。
学校のホームページは2002年9月にリニューアルされて、公式ホームページとなった。今までは一部の教員が「趣味でやっていた」ホームページであるとして、廃止されてしまった。せめてアーカイブとして残しておいてほしかったのだが、それはかなわなかった。
だから、残念ながら、今ではこのクラス日誌は見ることができない。新しいホームページは見栄えはよくなったが、生徒たちのありのままの声を反映したところがほとんどない。つまりつまらなくなってしまった。
ホームページというものは、どこもこんなふうに展開するものなのだろう。はじめは、試行錯誤で、手作りで、それを作る担当者たちの個性がよく表れていたが、だんだんそれが問題視されて、公式的なものになっていくとともに、特徴が失われ、個性がなくなっていく。
わたしのつくったクラス日誌のページを、クラスの生徒たちは「あれは担任が趣味でやっていること」として無関心を装っていた。まだ家庭で簡単には見られない時でもあったことも幸いしてか、生徒から問題視されたことはなかったし、これがおもてだって話題になったこともなかった。
一番喜んでくれたのは、単身赴任している生徒のお父さんたちであったようだ。「毎週楽しみにして見ています。」という声を直接にあるいは生徒を通して間接的に何度か耳にした。私のクラスよりも同じ学年の他のクラスのお父さんが多かったのかもしれない。
このような大胆のことは今やれといわれてもできないし、またしないであろう。あれはインターネットの怖さを知らない時のことであったのだから。
このようにインターネットの草創期のおもしろさを体験できたことは、かけがえのないことであった。ああいう時代はもうしばらくやってこないであろう。
posted by mrgoodnews at 01:41|
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