この話は次のような話である。
太平洋戦争中の昭和17年、東条英機総理大臣のもと、国政に全面的に賛成する議会を作るべく総選挙が行われた。政府への批判は非国民とされ、露骨な選挙妨害が相次ぎ、各地から選挙無効の訴えが大審院に持ち込まれた。他の民事部が原告敗訴の判決を出す中、正義を求め続けた男がいた…………大審院第三民事部部長(裁判長)吉田久。政府の圧力に屈することなく、真実を見つめたひとりの裁判官と彼を支えた家族の物語。
2009年 NHKドラマ化され、大きな反響を呼んだ莞隚作を竹内一郎書き下ろしで舞台化するこの秋の話題作!
1940年2月2日の第75議会で壇上に立った民政党斎藤隆夫の有名な「反軍演説」については以前書いたことがあるが、こういう人物がいたことは恥ずかしながらまったく知らなかった。この演劇を見て初めて知った。そのことだけでも見に行ってよかったと思った。
岩ア加根子さんはじめ、坪井木の実さんも熱演だった。台詞が多かったにもかかわらず話はとても判り易かった。周りの若い人たちは「ねえ、わかった?」とききあっていたが、私はよくわかった。
しかし、ちょっと気になることがあった。5人の判事の内3人までは選挙無効に反対していたにもかかわらず、最終的には全員選挙無効の審決が下った、この審決については法廷場面だけで知ることになる。つまり、選挙無効に反対していた3人の判事が考えをひっくり返す審議の場面が演じられていなかったのである。本来この審議場面がクライマックスともいうべき場面になるのではないのかと思ったのだが、それがなかったのはちょっと物足りなかった。
これはシナリオの問題ではないかと思うが、俳優たちはそこを演じきる自信がなかったのだろうか?
あとで、憲兵とのやり取りで、東京大空襲以降の焼け野原となったのをみて、考えを変えたということが説明されるのだが、なんとも、物足りない感じが残ったのである。
このような裁判官がいたことを、今の裁判官や裁判員はどのように受け取るのであろうか? 感想を聞いてみたい。
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