この1週間は大変だった。
いよさんが札幌から帰ってきたあとの10月29日に「胃潰瘍」で入院した。札幌行きが響いたのかもしれない。
そしてさらに入院中の先週の水曜日に吐血した。かなり大量の血を吐血したので、出血多量による「事態の急変」を心配するほどであった。
さいわい、出血は止まり、そのご順調に快方に向かっているようなのでひとまず安心している。
2晩病院に付き添いで泊まり込んだが、いよさんの意識はしっかりしていたのが救いだった。
入院して付き添っているときのベッドに横になっているいよさんとの対話。
「いよさん、退屈だね。何かして遊ぼうか?」
「遊ぶ? 動けないからむりだよ」
「じゃあ、お勉強しよう、あたまはつかえるよね。」
「うん、いいよ。なにするの?」
「じゃあ、最初は算数ね。足し算をしてください」
「簡単なのならいいよ。」
「じゃあね。14+9は?」
「23」
「いいねえ、よくできるね。じゃあ、23+12は?」
「え〜と、35.」
「ぴんぽーん。35+17は?」
「53」
「ぶーっ。35+17だよ。」
「52」
「ぴんぽーん。52+28は?」
「52+28? 70かな。」
「ぶーっ。 じゃあ、28+52は?」
「80」
「ピンポーン」
ともかく頭を使うことを厭わないところがえらい。
「じゃあ、次は国語のお勉強ね。」
「この漢字読める?」といって、100円ショップで買ってきた「今こそ恥じない漢字の読み方1」という本に書かれている漢字熟語を読ませた。
「男気 理解 外来 体裁 礼儀 行脚 素質 図書 工事 修行 気配 解毒 外科 行使 体得 礼賛 素性 図面 工面」
このうちいよさんが読めなかったのは
「行脚 図書 解毒 礼賛」である。いよさんはけっこう漢字の読みには強い。漢字を書くのはたいへんだが。
「じゃあ、次は英語の時間。1から100まで英語で数えてご覧」
だいたいいえる。
「67は?」「sixty seven」とこの位ならちょっと考えるだけでいえるのである。
「次は社会科の時間。日本の首都は東京。アメリカの首都は?」
「わかんな〜い」
「じゃあ、神奈川県の県庁所在地は横浜。静岡県の県庁所在地は?」
「県庁所在地って何? わかんな〜い」
「日本で一番高い山は?」
「富士山」
「ピンポーン」
社会科は難しいようである。分かるのは日本で一番高い山くらい。
「じゃあ、音楽の時間ね。一緒にお歌を歌いましょう。」
「ずいずいずっころばし。ごまみそずい。つづけて一緒に歌おう」
「ちゃつぼにおわれてとっぴんしゃん。ぬけたらどんどこしょ」
この歌はすらすらと最後までだいたい歌える。
「じゃあ、次はこの歌歌える? 夏も近づく八十八夜♪」
「のにもやまにもわかばがしげる♪」
「あ、うたえるうたえる、すごーい。おぼえているんだ」
「あれにみえるはちゃつみじゃないか♪ あかねだすきにすげのかさ♪」
「あかねだすきってなに? すげのかさってどんなかさ?」
「わからな〜い」
「じゃあ、このうたは? はしらのきずはおととしの♪ なんのうただ?」
「5月5日のせいくらべ♪ せいくらべの歌だ。」
「5月5日の端午の節句の歌だよね。続いて歌ってご覧」
「ちまきたべたべにいさんが はかってくれたせいのたけ♪
きのうくらべりゃ なんのこと やっとはおりの ひものたけ♪」
「うたえるね。」
「じゃあ、今ごろの秋の歌。あきのゆうひに♪」
「てるやまもみじ こいもうすいも かずあるなかに………♪」
5分前の記憶を完全に失ってしまう記憶障害とはとても思えないくらいによく覚えている。
その他にいよさんが1番の歌詞をそらんじていて歌える歌は次の歌であった。
「もういくつねるとお正月」
「年の初めのためしとて」
「ゆーきやこんこん」
「さぎりきゆるみなとえの(冬景色)」
「あかりをつけましょぼんぼりに」
「はーるのおがわは」
「はるがきた」
「どんぐりころころ」
「いらかのなみとくものなみ」
「うのはなのにおうかきねに」
「なのはなばたけにいりひうすれ」
「あめがふります」
「うみはひろいなおおきいな」
「むらのちんじゅのかみさまのきょうはめでたいむらまつり」
「しずかなしずかなさとのあき」
「みかんのはながさいている」
「はこねのやまはてんかのけん」(これがけっこう歌えるのには驚いた」
「しょうしょうしょうじょうじ」
「とおりゃんせ」
まだあるだろう、歌える歌を発見していくのは楽しい。
いよさんが「しらな〜い」といって歌えなかった歌
「あんたがたどこさ」
「いちかけにかけでさんかけて」
「どこかではるが」
「なかよしこみちはなんのみち」
「あのこはた〜れ」
つぎに、いよさんの青春時代、昭和10年代にはやった歌をiPad で見ながらきいてみた。
「青春日記」「高原の旅愁」「青春パラダイス」「新雪」「純情の丘」
これらは全滅。いよさんは「しらな〜い。きいたことな〜い。」
戦後の「りんごの歌」「青い山脈」のほうがまだよく歌える。
それほど歌好きではなかったし、自分で口ずさんでいるのはほとんど聞いたことはないのだが、「ずいずいずっころばし」をうたっているいよさんはたまらなくかわいい。今度ビデオに撮っておこう。
テレビの歌番組は好きでよく聞いていたが、この頃の歌は何も覚えていない。
こちらにもあります